into the blue

将来の夢はキリン

ミステリしか読まんのか君は

って自分に対してツッコんでしまったよね。

川上未映子著『すべて真夜中の恋人たち』を読んだ。不思議な読書体験だった。まず、手に取ったきっかけは装幀が綺麗だったから。キラキラしたホログラムが心をくすぐる。そして本を開き、軽く読んでみた1ページ目の文章の、なんと美しいことか。小説において、こんなに美しい1ページ目を私は読んだことないなと思った。いきなり物語が始まるのではなく、プロローグ的にその1ページを使っているからこそ生み出せる美しさなのだが、この方法ってすごくいいなと思った。もし自分が小説を書くとしたら真似したい構成だ。

そんな感動を覚えながら読み進めると、主人公が校閲の仕事をしていることが描かれる。いや、なんか引き寄せる力持ってんのかな?全然知らずに読み始めたのに、奇しくも目指している職業が出てきて笑う。

そしてさらに読み進めると、だんだん不穏な空気になっていく。主人公の、ちょっとまともではない行動にハラハラさせられる。それだけならまだしも、ヤバい!誰かここで死ぬかもしれない!とか、ここでこの人に裏切られるのでは!?とかいちいち考えてしまって、あんたはミステリしか読んでこなかったんですか?ええそうですけど、となる(セルフツッコミ)。癖でミステリ的な読み方をしてしまい妙に疲れてしまったが、それは“伏線”ではなく、“丁寧な感情描写”であると後に知ることになる。それくらい、とても丁寧に人間の不穏さを描いている。

私は石川聖が言っている言葉に共感することが多かったが、石川聖のように入江冬子のような人間と仲良くなろうとはしないよなとぼんやり思っていた。私は一方的に世話をするタイプの友情をまっぴらごめんだと思っている節がある。逆も然りで、一方的に世話されるのも嫌う。でも時には、お互いの苦手分野くらいは、お互いのことを世話するのもアリなのかもしれないと少し思った。そこから生まれる何かがもしかしたらあるのかもしれない。

 

たまにはミステリ以外の物語を読むと、人間の生臭さを感じられて、だからこそ人間なのだよなぁと思うことができて、良かった。